大気汚染、CO2削減をNEV規制施行ですり替えた中国!
では、世界第1位のCO2排出国である中国は、どのような動きがあったのか?図7に2010年~2019年における中国の新車販売台数の推移¹⁾を示している。2017年2,888万台という世界一の販売台数を誇り、翌年には3,000万台を突破する勢いであっった。この内訳で乗用車・SUVが2,472万台となっている。2018年から中国経済全体のGDPの伸びが鈍るなどが影響して減少傾向にある。さらに2020年コロナ禍にあって、微減の2,530万台と予想されているのは立派である。2019年2,577万台の内訳はトラック・バスが432万台、乗用車・SUVが2,145万台。SUV化率は52%と半分が燃費の悪いクルマが中国大陸を走っている。
2019年からCO2を大幅に低減できるEV、PHVの市場展開を促進する意図で、図8に示した中国NEV規制²⁾が施行された。2019年のNEVシェアは5%程度で、大問題なのは残り95%のクルマの燃費をどう下げるかだ。中国政府はCO2排出量が堂々の世界第1位という自覚は少なく、問題をすり替えてNEV規制強化に話をすり替えている。NEVでどの程度平均CO2を下げられるのかが重要となる。
ではそのNEVの販売台数は果たして伸びてきているのだろうか?図9に示したNEV販売台数推移から分かるように、2016-18年までNEV販売台数の前年比が+50%以上を記録していたのに、2019年にははじめてマイナス成長となるー4%となった。2019年販売台数2,577万台中、120万台がNEV。EV化率は4.6%と世界平均2.1%の倍以上ではあるが、NEVによるクルマからのCO2削減活動は止まったも同然である。
中国政府としてはNEV規制をこのまま強化(2023年には18%)していっても、NEV販売台数はさほど増加するとは思えず、やむなく2019年後半からNEV規制緩和策を検討している。例えば、NEV規制によれば2019年には100万台販売するメーカーにはEVを2万台販売することを義務付けている。これに対して燃費がいいHVを100万台販売するならば、EVは6,000台販売すればいいという緩和策³⁾である。日本の燃費がいいHVが俄然有利となった。HVをさらに優遇してNEV以外の95%のクルマ、特にSUVにメスを入れるべきであると思うのは私だけであろうか。2021年以降の実績を詳細に静観していきたい。@2020.12.28記、2021.1.21修正
《専門用語の解説および参考文献》
1)「自動車販売台数速報;中国2019年」@MARK LINES
2)中国NEV規制☛中国国内ではプラグインハイブリッド(PHEV)、電気自動車(BEV)、燃料電池車(FCV)を新エネ車NEV(New Energy Vehicle)と定義し、その普及を目指している。2018年施行予定であったが、1年遅れの2019年から開始した。
3)「中国NEV規制について説明します」EV業界が分かるノート@2019.5.4