2015年LiB製造コストの3~4割が材料費!
LiBのセルをフロア下に一杯敷き詰めなければ、EVはクルマとして成り立たない。それでも結果として、平均航続距離が400㎞、車両価格400万円となってしまっている。EVが性能も価格も一般消費者にとっては不満足なクルマにしている元凶は、LiBであることを述べてきた。
では、一体全体LiBをこんなコスト高にしている要因は何なのか?2018年の資料¹⁾ではあるが、図13にその内訳について、現状(2015年)と見通し(2020年、2025年)を示した。この資料では2015年では総コストが390$/kWhであった。見通しとしては2020年、2025年にかけて300$/kWh➡254$/kWhと下がると予想をしている。ここで、問題なのはその内訳の内容である。2015年の総コスト390$/kWhの内訳で両極活物質、セル部材という何と材料費が34%もある。その後、製造方法の合理化が進み、材料費が全体に占める比率は37%@2020年➡42%@2025年と大きくなる傾向を示している。つまり、材料費は数量ベースが増加してもなかなか下がらない。2015年➡2025年にかけて総コストは35%も低減しているのだが、セル原材料費は18%しか低減できていない。つまり、いくらセル製造コスト、パックコストを低減できても電池内部の材料費が下がらなければ、LiBのコストは下がっていかない。量産効果は期待できないということだ。2025年の原材料比が107.9$/kWhということは、セル製造コストを100$/kWhにするということは非常に難しいということだ²⁾。
出典☛「平成29年度鉱物資源開発の推進のための探査等事業」(株)三菱総合研究所
@2018.3.23 より加筆
その中で高コストの元凶は正極のNCM333とバインダー!
では材料費のコスト構成を見てみよう。図14は三元系であるLi-Ni/Mn/Co-O2のコスト構成(2016年データ)を円グラフで示した。材料コストに中で正極の45%が非常に高く、負極20%、セパレーター18%、電解液15%、その他2%となっている。正極45%の中で活物質であるリチウム酸化物NCM333³⁾が14%、活物質の糊の役目を果たすバインダーであるポリフッ化ビニリデン⁴⁾(PVDF)は16%ということで、活物質、バインダーで正極材コストの2/3を占めている。この辺りから、安価な材料にしていかないと量産効果なのは全く望めない。@2021.2.15記
出典☛「平成29年度鉱物資源開発の推進のための探査等事業」(株)三菱総合研究所
@2018.3.23 より加筆
《参考文献および専門用語の解説》
1)「平成29年度鉱物資源開発の推進のための探査等事業」(株)三菱総合研究所@2018.3.23
2)図8では2015年250$/kWh、2020年100$/kWhとなっているが、図14の総コストからパックコストを除くと2015年255$/kWh、2020年204$/kWhとなっている。ただし、2020年は倍もズレているが、日産リーフe+の210$/kWhを考慮すると204$/kWhに予想値は実態に近い。
3)NCM333☛リチウム酸化物Li-Ni/Mn/Co-O2において、Ni、Mn、Coの量が同じく1/3と同じ配合のNCMのこと。最近では表示が入れ替わっているがNMC532➡NMC622➡NMC811とハイNi化が進んでいくと予想されている。
4)ポリフッ化ビニリデン☛PolyVinylidene DiFluoride(PVDF)は高耐性、高純度な熱可塑性フッ素重合体のひとつである。PVDFは高価であり、一般的に高純度、高強度や耐薬品性、耐熱性が要求される用途に用いられる。特に、PVDFは強誘電性のポリマーであり、圧電性や焦電性を示す。@Wikipedia