日本はEV化に乗り遅れてしまったのか?
クルマからのCO2排出量を2013年度比で2030年に30%削減するには、EVの力が必要であるということは分かった頂いたと思う。欧米では20%以上、日本でも10%以上のEV化率が2030年時点で必要である。ところが、ここ数年のEV化率は数%程度で中々伸びてこなかった。やはり、航続距離400㎞、価格400万円を超えるEVは一般消費者には受け入れられないのであろうか?
そう考えていた矢先、2020年後半に欧州の状況が一変してきた。第1章1-1の図3にあるように、欧州平均CO2排出量が大きく削減されてきたのだ。ここ数年120g/㎞前後を推移していた平均CO2の排出量が2020年1月-6月には118.5g/㎞であった¹⁾のが、1月-8月にはEU-21で突然102.2g/㎞まで減少してきた²⁾。理由は2021年規制を目標とした電動車の信じられない拡販であった。マイクロHV、HV、PHV、そしてEVという電動車が市場に流れ込んできたのだった。8月時点で昨年同時期の年初来累計台数がコロナ禍で33%減の725万台になったにも関わらず、8月電動車のマーケットシェアは21%という伸びを示した。9月にはディーゼルシェア24.8%を抜いて、何と25.2%まで伸ばした³⁾。将に欧州電動化革命が起こってしまった。こんなことを誰が想像したのであろうか?
一方、大陸を渡った米国では2012年に当時のオバマ政権がMY2025燃費規制⁴⁾を2019年9月にトランプ政権は緩和をし、さらに加州のZEV規制制定の権限を停止するという動きになっていた。ところが、2021年1月バイデン新大統領は政権発足後、早速パリ協定に復帰し、MY2025規制をMY2026規制として復活させようとしている。さらに、公用車65万台全てをEVにしていくと表明。ぬるま湯に浸かった米国もバイデン大統領に変わり、時間はかかりそうであるが、やっと動き出したという感じである。
中国の2020年乗用車販売台数は、前年比6%減の2017万台⁵⁾となり、世界で最も早くV字回復した国となった。NEV規制によるEV、PHVの販売台数は136万台⁶⁾、EV化率は6.7%となり、世界最大のクルマ市場、EV市場はコロナ禍を物ともせず、着実に電動車NEV、HVを増やしている。電動化革命が起きた欧州と共に、今後中国は年々強化されていくNEV規制で着実にEVは展開されていくことになると思われる。
問題なのは、日本である。最近はそう思うようになってきた。HV化でCO2削減に対して着実に日本市場、世界市場で貢献してきた。また、日本独特である軽自動車化は、日本のクルマCO2削減に大きく貢献してきた。2030年には10%程度のEV化を進めるだけで、パリ協定の約定目標であるCO2排出量を30%削減できる目途も立ってきた。HV化・軽自動車化に浮かれ、俺たちだけは世界とは違うと勘違いをして、さらなる2030年後の姿を見過ぎていた。ガソリン満タンで800-1000㎞走れるクルマじゃないとクルマと言えないと傲慢に思っていた。世界のEV化が急激に進んでいることに対して、今や最もEV化に対する意識、そしてEV化そのものが大幅に遅れてしまったというのが今の日本ではないだろうか?世界乗用車販売市場の5%に相当する日本の500万台市場で生き抜くローカルベストの道は果たして正解なのであろうか?
以上のことを踏まえながら、再度欧州から振り返ってみたいと思う。そして、身近にEV化の道が見えるように、少し枠を拡げながら探索してみたいと思う。@2021.3.12記
《参考文献および専門用語の解説》
1)「二酸化炭素排出量レポート2020年上期」JATO JAPAN Limited@2020.8.24
2)日経Automotive(2021年1月号)@日経BP社;P44
3)「2020年9月欧州新車販売台数速報」JATO JAPAN Limited@2020.11.6
4)「米国の燃費規制:バイデン次期政権が厳しい規制を制定し、EV化を推進」MARKLINES@2021.1.8
5)「中国の自動車販売台数:2020年は1.9%減の2531万台」新華社@2021.1.19
6)「欧州のEV・PHV販売、中国に並ぶ 20年は前年の2.4倍」日経新聞@2021.2.5