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第13話 理論空燃比制御

 休憩後、理論空燃比制御の話に入ることにした。

 「さて、三元触媒の浄化率を上げるためには、狭いウィンドウの中に空燃比を入れることが重要だと話したよね。じゃ、どうやって理論空燃比燃焼を可能にするか?それを可能にしたのが、図2-4に示した三元触媒システムだ。

このシステムにおいて、重要なポイントは三元触媒コンバーターの前後に、酸素濃度が計測できるO2センサーを配置することにある。前のセンサーは本来の酸素濃度検出用で理論空燃比制御に使われる。また後ろのセンサーは自己診断用で、前のセンサーが正常に働いて制御しているどうかを触媒後の酸素濃度でチェックしている¹⁰⁾。O2センサーの構造については、いろいろな専門書、ネット情報¹¹⁾があるから自分で勉強をすることを進めるよ。センサー内部の電極に一方は大気、他方を排気ガスにさらすと、排気ガスの酸素濃度によって起電力が発生するという仕組みなんだ。これにより、0⇔1V電圧信号がエンジンECUに送られる。これが標準的な三元触媒システム。」

 

図2-4 三元触媒システム

 「さてこの制御システムの具体的な内容について説明を続けよう。図2-5には理論空燃比制御の精度を如何にして上げるのか¹²⁾を示している。順に説明していこう。まず運転者のアクセルペダルにより、必要なトルクはエンジンECUに要求される。既にエンジンECU内部のメモリーには、理論空燃比燃焼が出来るようなマップ(エンジン回転数、吸気スロットル開度に対する燃料噴射量のマップ)が記憶されている。したがって、理論空燃比に対するインジェクターの通電時間を読み取って燃料噴射させる。この時、燃焼は理論空燃比燃焼を狙ったもので、オープン制御¹³⁾と言われる。ただ、このオープン制御では個々のエンジンに対するバラツキが考慮されておらず、ウィンドウ内での理論空燃比制御の精度は望めない。」

 

図2-5 理論空燃比制御の精度向上

図解雑学「自動車のメカニズム」古川修@ナツメ社;p93 より加筆

 

「そうだね。部品、燃焼状態にはいろいろなバラツキがあるから、一定のマップ値では、当然空燃比もバラツクだろうね。」

「そこで、O2センサーの登場だ。このセンサーの発明がなかったら、理論空燃比の制御も向上せず、折角の三元触媒システムも生かされなかったね。このO2センサーにより排気ガス中の酸素濃度を検出して、エンジンECUでその時の空燃比を瞬時に演算する。 ただし空燃比を±3%というウィンドウ内に制御するには、オープン制御では全く無理なことだ。またこの空燃比の微調整を吸気スロットル開度で行うのも難しい。そのため、排気ガスの酸素濃度から空燃比を算出して、理論空燃比になるように噴射量(インジェクターの通電時間)をわずかに修正するというフィードバック制御¹⁴⁾を行っている。」

「この理論空燃比制御というのは凄いね。エンジンサイクル毎の酸素濃度をECU(いくつかの平均値)からフィードバック制御するというのは、今でこそ当たり前に思うかもしれないけれど、計算速度なんかで当時は大変だったと思うよ。」

「その通りだね。将にカーエレクトロニクス時代の幕開けがこの三元触媒のエンジン制御ということかな?ガソリン車は三元触媒システムを使った理論空燃比制御によって、排ガス浄化が数段向上した。あとは排気ガス規制値を見ながら、どれだけ理論空燃比燃焼範囲を広げるか、どれだけリッチ燃焼¹⁵⁾をして出力を上げるか、どれだけリーン燃焼¹⁶⁾にして燃費を良くしたりするか、これが各社の腕の見せ所だった。」

「燃費・出力を良くしながら、如何に空燃比制御をして排気ガス規制値を順守していくかということ?」

「その通りだね。ところが、年々排気ガス規制値が厳しくなるにつれて、理論空燃比制御域の運転域で広がってきており、今では全域近くなってきた。空燃比制御で燃費向上のための空燃比を選択できなくなったんだね。そこで何とかガソリン車の燃費を伸ばそうという強い思いで登場してきたのが、ダウンサイジングターボというコンセプトなんだ。さらなる燃費向上策としては起死回生の一手となった。純くんの疑問点の一つだよね。明日はこれについて話をするとしよう!」ということで、今日の談義はお開きにした。博士は明日の資料を集めるために自分の部屋に戻ることにした。蝉がうるさく庭先で鳴いるのが聞こえてきた。夏真っ盛りである。@2018.12.7記、2019.12.3修正

 

《参考文献および専門用語の解説》

10)図2-4を見ると三元触媒下流にもO2センサーが設置してある。これは上流と全く同じセンサーで、触媒により浄化された後の排気ガスの残留酸素量を検知している。米国の排気ガス規制により、高温の排気ガスにさらされた上流のO2センサーに異常がないか、自己故障判断をすることが義務付けられている。この自己診断機能は、米国1996年を始めとして、欧州2001年、2006年日本においてOBDⅡ(On Board Diagnosis second generation)として全車に付けられた。

11)例えば、「ジルコニア酸素センサーとは」@NGK

12)図解雑学「自動車のメカニズム」古川修@ナツメ社;p93 

13)オープン制御☛制御結果の検出や、それによる補正を行わない制御

14)フィードバック☛出力の目標値と実際の出力値を比較して自動的に出力値と目標値が一致するように制御する仕組みのこと

15)リッチ燃焼☛燃料過剰燃焼のことで、A/F<14.7。

16)リーン燃料☛希薄燃焼のことで、A/F>14.7。

 

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  • 第1章 クルマ談義の始まり!
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    • 第11話 化学反応式
    • 第12話 三元触媒のしくみ
    • 第13話 理論空燃比制御
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