「昨日までに説明してきた3つのHVを思い浮かべながら、燃費という切り口からHVを考えていこう!
まず第1章第7話のところで話をした図1-9の正味燃料消費率等高線を思い出してほしい。これは正味熱効率ηthに反比例した等高線MAPで最小燃費領域は最大正味熱効率領域を表していることは覚えているかな?
HVでは通常運転ではなかなか使えない最小燃費領域をできるだけ使用して、3つのHV機構によりエンジン運転してモーター(発電機)を回し、2次電池に充電する。その高熱効率にて充電した電力でモーターを駆動させてクルマを走らせる。そのため、直接低熱効率領域で運転駆動するGVよりも燃費が良くなる。これがHVの基本原理だ。
では簡単にHVの燃費モデルを考えてみよう。純くんはTank-to-Wheel効率⁹⁾という考え方を知ってる?」
「名称は聞いたことある程度だね。」
「これは油田(Well)からホイール(Wheel)までのトータル効率を表す”Well-to-Wheel効率”に対して、途中の燃料タンク(Tank)からホイール(Wheel)までの効率を表すものだ。図3-4に両方の効率を比較して模式図で示した。全体のWell-to-Wheel効率=ηT、Well-to-Tank効率=ηT1、Tank-to-Wheel効率=ηT2とすると、
❏トータル効率ηT=(Well-to-Tank効率ηT1)×(Tank-to-Wheel効率ηT2)
❏ηT2=(エンジン正味熱効率ηe)×(変速機などの機械効率≒0.80)」
「思い出してきたよ。Tank-to-WheelのCO2はゼロだから、EVはCO2ゼロとCMで言っていた。でも電力を得るには、Well-to-TankのCO2を発生させているよね。」
「その通り。ただ、GV~HVの燃費談議ではWell-to-TankのCO2はすべて同じと考えているから、Tank-to-Wheel効率ηT2だけで進めたいと思っている。後半のEVを含めたところでは、Well-to-Wheelのトータル効率ηT、CO2を取り上げて比較しようと考えているので、楽しみにしていてほしい。
図3-4にまた戻って追加の説明をするよ。エンジン正味熱効率ηeを15~30%の間で使用されているとし、また変速機などの機械損による機械効率を約0.80程度と考えた。すると、トータル効率ηT2=0.12~0.24であり、算術平均値はηT2=0.18である。今後はこのようにTank-to-Wheel効率の平均値で話を進めることにする。」
ここで一休みをして、HVの燃費を議論するための簡単なモデル化の話に進むことにした。@2018.12.13記、2019.7.26修正
《参考文献》
9)例えば、「電気自動車が一番わかる」石川憲二@技術評論社;p25
出典☛「電気自動車が一番わかる」石川憲二@技術評論社;p25 より加筆