2030年の予想保有台数は2013年比5%増で2.41億台
さて、欧州のケースと同じように、2030年の目標平均CO2を算出していこう。目標削減率は、2013年比で30%とする。初めに、米国が2013年に保有していたクルマの総台数を推定してみよう。クルマの寿命は15年とする。したがって、1999年~2013年の新車販売台数の総和が保有台数ということになる。図9に米国における2000年から2019年までの新車販売台数の推移を示した。ここで、2008年の激減要因は欧州と同じようにリーマンショックの影響である。米国は立ち直りが早く、2年後の2010年には増加傾向に戻っている。そこで、1999年の販売台数を1,700万台とすると、2013年の保有台数は次のようになる:
❏米国乗用車保有台数@2013年=Σ1999-2013年=2.30億台
さらに、2015年~2019年では1,700万台前後で元に戻っているようにみえる。欧州と同じく、クルマの寿命は15年とすると、2016年~2030年までの保有台数は次のようになる:
❏米国乗用車保有台数@2030年=Σ2016-2030年=1,700万台✖15=2.55億台
❏2030年保有台数/2013年保有台数=2.55/2.30≒1.10
となり、2013時点に比べて10%増加したことになる。ただし、ここでも2020年からのコロナ禍の影響を受けるため、5%増加に留まると仮定した:
❏米国乗用車保有台数@2030年=2.30✖1.05=2.41億台
出典☛2019年の米国新車販売台数は1.3%減少@JETRO(2020.2.28)
目標平均CO2=346➡231gr/㎞@2030年で欧州の1.8倍!
次に2013年に保有した2.3億台の平均CO2を算出する。図10はEPAが発表した論文²⁾からの抜粋である。横軸に年代(Model Year)、縦軸には乗用車(Cars)、SUV(Truck)、全体平均の燃費³⁾(MPG)が示されている。論文に明記された2016年データでは
❏全体=24.7MPG、乗用車=28.5MPG、SUV=21.2MPG
となっており、この時点では乗用車に比べてSUVは34%も燃費が悪化している。
そこで、図10から1999年~2013年の燃費データを読み取って平均平均値を算出した:
❏平均モード燃費@1999年-2013年=20.9MPG=8.88≒8.9㎞/L
❏平均実燃費@1999年-2013年=8.9✖0.75⁴⁾=6.675≒6.7㎞/L
したがって、2013年に保有するクルマの平均CO2は
❏平均CO2@2013年=2320/6.7=346.3≒346gr/㎞
以上の結果から分かるように、欧州と比較すれば約2倍弱程、燃費は悪いと言える。この悪い燃費で、2030年にCO2を30%低減する目標平均CO2を算出すると、
❏目標平均CO2@2030年
=(1-削減割合)✖平均CO2@2013年✖保有台数@2013年/保有台数@2030年
=(1-0.30)✖346✖2.3/2.41=231gr/㎞
米国の目標平均CO2@2030年を図11に示した。2030年には保有台数の増加が予想されるため、多少厳しくなったが、欧州に比べればまだまだ緩い結果になっている。米国が削減目標値である「231gr/㎞」を達成するために、どんなクルマ構成にしていけばいいのか、第5話で説明する。@2021.1.16記
出典☛「Highlights of CO2 and Fuel Economy Trends」@EPA(2017.1.19) から加筆
《参考文献および専門用語の解説》
1)「乗用車普及台数の国際比較(2011年)」社会実情データ図録@2013.9.4
2)「Highlights of CO2 and Fuel Economy Trends」@EPA(2017.1.19)
3)燃費の単位(MPG)=1.609㎞/3.785(L)=0.425(㎞/L)
4)日本の実燃費換算として、2013年には0.75、2030年には0.70を用いた。