2030年保有台数3.3億台に!何と2014年比2.3倍!
では、欧州、米国での2030年クルマCO2予測を中国でも試みた。2013年の乗用車保有台数データはなく、2014年のJAMA公表データを用いる:
❏中国乗用車保有台数@2014年=1.43億台¹⁾
次に2030年の保有台数を予測する。クルマの寿命は欧米と同じく15年とした。したがって、2016年~2030年の新車販売台数がそのまま市場に残るとしている。前話図13において、2016年~2019年の平均販売台数は2,356万台でほぼ飽和状態と考えた。欧州と同じくコロナ禍の影響が5%程度あったとすると、乗用車・SUVの平均販売台数は2,200万台/年。したがって2030年の保有台数予測は、次のようになる:
❏中国乗用車保有台数@2030年=0.22✖15=3.3億台
欧州が2013年比=1、米国が2013年比=1.05に対して、直近4年間の平均値に対して95%と考えても、中国は何と2014年比=3.3/1.43=2.3倍となる。これだけでも、NEV規制で何とかなるという状況ではないことがお分かりになるであろう。
2015年に平均燃費目標7L/100㎞を達成!
図15に乗用車平均燃費の目標値と実績値、図16に平均燃費実績値と平均車重推移を示した。図15において、2006年実績値8Lから2015年7Lまで100㎞走行当たりの燃費を改善してきている。2015年目標値6.9Lに対して、7Lという実績値は中国にしては立派である。7L/100㎞は14.3㎞/Lであるので、欧州130gr/㎞規制に対応する燃費17.8㎞/Lの80%レベルまで到達している。その後は2020年5L、2025年4L、そして2030年には3L/100㎞と燃費目標を立てているようだ。
出典☛「世界の燃費規制の進展と自動車産業の対応」
@三井物産戦略研究所2017.3.15 より加筆
出典☛「世界の燃費規制の進展と自動車産業の対応」
@三井物産戦略研究所2017.3.15 より加筆
図16において、中国系燃費と外資合弁系燃費の推移、各平均車重の推移を示している。2006年~2013年にかけて、外資合弁系は重量車両に、また中国系は軽車両に使われていたにもかかわらず中国系の方が燃費が悪かった。ただ2015年では車重、燃費とも中国系、外資合弁系に差はない。技術レベルが上がって来たと評価してもいいのではないかと考える。そこで、これらのデータから2030年に保有する3.3億台に平均CO2はどの程度燃費低減が出来ているのか、さらに2014年比で平均CO2を30%削減するにはどうすればいいのか、検討してみた。
NEV規制では何ともならない中国CO2排出量!
図15において2000年~2006年を直線補間し、2000年~2014年の平均燃費を求めると、
❏平均燃費@2000-2014年=7.825²⁾≒7.8(L/100㎞)
次に中国が目標値を順守して、2030年までに平均燃費が3L/100㎞になったとする。その場合、2016年~2030年の平均燃費を求めると、
❏平均燃費@2016-2030年=4.67≒4.7(L/100km)
ここで3つのCASEについて、2014年比での平均CO2の低減率を推定してみた:
❏CASE-1☛EV化が頓挫して、平均燃費目標値だけを順守した場合
燃費低減率=平均燃費@2016-2030年/平均燃費@2000-2014年✖3.3億台/1.43億台
=4.7/7.8✖3.3/1.43=1.39≒1.4倍
保有台数が2.3倍にも膨らむため、いくら平均燃費40%減少させても、CO2排出量は
1.4倍にも増加することになる。やはり、年間2,200万台もの新車販売することが大き
く影響しており、CO2削減を非常に難しくしている。
❏CASE-2☛EV化を2030年までにEV化20%(同時に平均燃費目標値到達)
EV化率を5%@2020年、10%@2025年、20%@2030年と順調に伸ばしていった場合、
平均燃費@2016-2030年={0.975✖6²⁾+0.90✖4.5²⁾+0.80✖3.5²⁾}≒4.2(L/100km)
燃費低減率=4.2/7.8✖3.3/1.43≒1.24倍
欧州並みにEV化率を上げても、平均燃費は1.24倍に増加してしまう。NEV規制でCO2
削減とは「夢のまた夢」と言っているのは、このことだ。
❏CASE-3☛EV化率を直線的に増加させ、2030年までに50%(燃費低減も行う!)
現実的にはあり得ないEV化率ではあるが、簡単に計算してみた:
燃費低減率={0.25✖0+0.75✖4.7}/7.8✖3.3/1.43≒1.04
これだけのEV化を進めても2014年に保有したクルマのCO2排出量を維持するだけに留
まっている。
中国はクルマの平均CO2を下げるのは、保有台数、つまりこれからのクルマ平均販売台数2,200万台にメスをいれなければ、何ともならない。公共交通機関の拡充、シェアリングなどを政府が率先して進めなければ、平均CO2は下らない。残念ながら欧米諸国と同じような、一人当たりの保有台数⁴⁾まで増加させると、飛んでもないことになるのである。では、どこまで販売台数を減らせばいいのかと言えば、平均CO2削減率を2030年30%として、CASE-2の場合で検討すると、
❏保有台数@2030年=1.43✖7.8/4.2✖(1ー0.30)=1.86(億台)
❏年間平均販売台数@2016-2030年=1.86/15=1,240(万台)
要するに、毎年の新車販売台数を2,200➡1,200万台/年に何らかの施策で1,000万台も減らさなければ、中国のクルマ平均CO2の30%削減などありえないのだ。これでNEV規制だけでは何ともならないことはご理解いただけたと思う。@2021.1.21記
《参考文献および補助説明》
1)豆知識「日本と世界の自動車保有台数」CARDAYS MAGAZINE@2017.1.30
2)平均燃費=8.4@2000年、8.1@2004年、7.8@2009年、7.0@2014年とすると、2000~2014年の平均燃費は、7.825≒7.8(L/100km)。
3)平均燃費@2016-2020年=(7+5)/2=6、平均燃費@2021-2025年=(5+4)/2=4.5、平均燃費@2026-2030年=(4+3)/2=3.5
4)1000人当たり米国860台、欧州600~750台、日本615台@2018年末に対して、中国は140台(2億台/14.35億人)@2018年末