2030年の予想保有台数は5%増の6,300万台!
さて、欧州、米国、中国におけるクルマの排出CO2削減について、結構辛辣な内容を話してきたが、肝心の日本はどうなのであろうか?パリ協定の約定目標は、2013年比で2030年までにCO2を26%削減するとなっている。細かく言えば、クルマの範疇である運輸部門では27.6%削減となっている。各国と路線を合わせた格好だ。しかし、ここでは日本も30%削減するにはどうすればいいのか?を説明していこう!
では、早速30%削減するための2030年CO2目標を検討していく。そのためには、これまで行ってきた以下の数値を算出しなければならない:
1)クルマの平均寿命(平均を算出するのにどこまで遡るのか?)
2)日本の新車販売台数推移と保有総台数@2013年、2030年
3)平均CO2(g/㎞)算出のための平均燃費(㎞/L)@2013年
4)目標CO2(g/㎞)@2030年
クルマの平均寿命について、前話では欧州、米国、中国では15年としてきた。日本では
自検協¹⁾のデータから次のように算出²⁾³⁾した:
❏クルマの平均寿命@2013年=12年
❏クルマの平均寿命@2030年=15年
次に、図17に新車販売台数推移を乗用車、軽自動車、合計について示した。国内では500万台新車が販売され、6割が乗用車、4割が軽自動車と考えればいい。ただし、2020年はコロナ禍の影響を受けて、460万台の販売台数に終わった。ただし、この影響はしばらく続くと考えられ、また1)若者のクルマ離れ、2)高齢者保有台数の減少、3)人口減少、4)シェアリング、などの理由から、2030年頃まで国内販売台数は年450万台を下回る台数で推移していくと予想される
日本の保有台数推移を図18に示した。2014年3月末には6,028万台保有していたが、ここ3年ぐらいは6,200万台で横ばい傾向が続いている。先ずは、2013年の保有台数は、
❏クルマ保有総台数@2013年=6,000万台
先ほど説明したクルマの平均寿命@2030年=15年、年間販売台数が450万台を下回ることを考慮して、年間販売台数を420万台とした。すると、2030年の保有台数は、
❏クルマ保有総台数@2030年=420万台(新車販売台数)✖15年(平均寿命)=6,300万台
2030年には2013年比で5%増加ということで、米国と同じ仮定台数となる。
出典☛自動車販売台数速報 日本2014年-2020年@MarkLines のデータからグラフ化
出典☛自動車検査登録情報協会ホームページのデータから作成
目標平均CO2=180➡120g/㎞@2030年、主要大国で最も厳しい!
さて、3)の2013年に保有するクルマの平均燃費を算出する。これには国交省のホームページからデータを適用した。付図1に示したように、2002年~2013年の12年間における平均値をガソリン車(GV)、軽自動車(2種の重量車)についてグラフより求めた。10-15モード値であるため、JC08モード変換⁴⁾、実燃費変換⁵⁾をして、それぞれの平均実燃費を求めた結果を付図1に示した:
❏ガソリン車の実燃費=11.6(㎞/L)
❏軽自動車の実燃費=14.5(㎞/L)
2013年時点で保有6,000万台中、乗用車が4,000万台、軽自動車が2,000万台と考えた。また2013年には既にHVが市場で走っており、そのほとんどがプリウスと考えていいので、実績データ7⁷⁾⁸⁾から200万台がプリウス⁹⁾、3,800万台が普通乗用車としましたHVの燃費¹⁰⁾は、
❏HV(プリウス)の実燃費=20.5(㎞/L)
以上のデータから平均燃費@2013年は、次のように算出される:
❏平均燃費@2013年={GV×台数+軽自×台数+HV×台数}/6000万台
={11.6×3800+20.5×200+14.5×2000}/6000=12.86≒12.9(㎞/L)
したがって平均CO2@2013年は、
❏平均CO2@2013年=2320/12.9=179.8≒180(g/㎞)
2013年比で30%削減するとして、2030年に保有するクルマの目標平均CO2は、
❏目標平均CO2@2030年=(1-0.30)✖180✖6000/6300=120(g/㎞)
したがって、図19に示すように、日本では2013年6,000万台のクルマが持つ、平均CO2「180g/㎞」をベースにして、2030年の保有する6,300万台のクルマが持たなければならない平均CO2は「120g/㎞」となった。@2021.1.24記
《参考文献および専門用語の解説》
1)自検協☛自動車検査登録情報協会の略。そのホームページの1981~2018年のデータも用いて平均寿命を算出
2)平均寿命@2007年=11.66(乗)✖0.70+12.22(軽)✖0.30=11.8≒12年、
平均寿命@2008年=11.67(乗)✖0.70+12.47(軽)✖0.30=11.9≒12年
➡平均寿命@2013年=12年
3)平均寿命@2018年=13.24(乗)✖0.60+14.73(軽)✖0.40=13.8≒14年
➡2030年には16年になりそうだが、欧米と同じく15年とした。
4)JC08モード/10.15モード≒0.90@国交省ホームページデータ
5)e燃費情報から、2013年に保有するクルマの実燃費(e燃費)/JC08燃費≒0.75
6)例えば「統計データで確認!」新潟経済社会リサーチセンター@2019.9.19
7)「トヨタ ハイブリッド車 世界累計販売台数の推移(1997年~)」@High Charts Frequent(2016.5.21)
8)「EV等保有台数統計」@次世代自動車振興センターホームページ
9)実際には2013年にはHVは280万台となっているが、残りの80万台(インサイトなど)は3,800万台の普通乗用車の内数とした。
10)HV(プリウス)の実燃費(e燃費)={19.7(2006)+19.9(2007)+20.4(2008)+21.7(2009)+21.0(2010)+20.7(2011)+20.4(2012) }/7=20.54≒20.5(km/L)☛平均燃費HV=20.5(km/L);ただし、プリウスは2006年~2012年の7年間で2代目(2003年~)、3代目(2009年~)が混在。
出典☛「ガソリン乗用車の10・15モード燃費平均」自動車燃費一覧@国交省ホームページ