LiB価格は年々下がっては来たが、まだまだ高い!
2020年欧州新車販売台数のハイブリッド部門で第1位となったのは、カローラHV。価格は中間のグレードで€2万。WLTCモードで燃費は29㎞/Lでタンク容量は43Lであるから、満タンで1,247㎞走行できる計算となる。80%使用としても、1,000㎞は走行できる。そこで、VW社ID.3は€3万で1回の充電で330㎞、80%容量使用では260㎞しか走行できない。車両価格は1.5倍で航続距離は1/4という比較結果になる。一般消費者は何を基準にEVを購入するのだろうか?
結果的には前話で触れたように、現在のガソリン車、HVに対して、航続距離はあまりに短いし車両価格が高い!ということだ。図4に示した論理?からすれば、EVは汎用部品を多く使用して安価なクルマになるはずであった。一体何がその論理?を狂わせたのだろうか?それは明らかに図6で示したように、LiB容量が大きくなると車両価格が高くなっているということだ。つまり、リチウムイオン電池がEVの全体価格に押し上げているのだ。ではLiBはどのくらい高いのか?図7にLiBの1kWh当たりの価格の推移を示した。2010年初代日産リーフの販売が始めった頃のLiB価格は$800/kWhであった。当時の電池容量が24kWhであったからことからLiB価格は、
❏LiB総価格=800$/kWh✖24kWh✖90円/$=173万円
となってしまった。このLiB価格では小型乗用車が買えてしまうことになる。当時のリーフ車両価格はグレードGで406万円、Xならば376万円であったので、LiB価格が占める割合は何と43~46%と半分弱!になってしまったのだ。それで1回の充電による実走行距離は60㎞というレベル。EV開発に携わっている方にはこれまでかなり失礼な意見を述べてきたが、最近の実力である平均LiB容量50kWh、モード走行距離400㎞、車両価格400万円という数字は、10年前に比べれば、かなり技術的に進化したと言えるかもしれない。
2019年発売開始されたリーフe+では、LiB価格は$210/kWh¹⁾と言われており、
❏LiB総価格=210$/kWh✖62kWh✖105円/$=137万円
にも昇る。これは車両価格441万円に対して31%に相当する。容量当たりの価格は1/4になり、結果的に航続距離を伸ばすことができたのは事実だが、エンジン単体が20~30万円の時代にこの137万円という電池価格は高い!と消費者が考えるのが普通であろう。
出典☛日経Automotive(2016年12月号)@日経BP社;p55 より加筆
如何にLiB価格を大幅に下げながら、大きく性能を伸ばしていくか?
VW社のID.3も勿論例外ではない。LiB価格も日産リーフほどではないが、リーフより安い$150/kWhと言われている。図9にID.3のLiB設置事例を示した。EV専用のプラットフォームMEBをもとにフロア下一杯にLiBが敷き詰められている。高いはずである。日産リーフも例外ではない。これほどまでにLiBを敷き詰めないとEVはクルマとして成り立たないのが現実だ。EVが高価格になるのは、高価格のLiBを多量に必要とするからだということがお分かりいただけると思う。図8に示したように、ID.3の車両価格に対するLiB価格の占める割合は19%(45kWh)、20%(58kWh)、24%(77kWh)となっている:
❏LiB総価格=150$/kWh✖(45-77)kWh✖105円/$=71-121万円
ということで車両価格の20-25%もする。
今後EVを広めるには、如何に価格を大幅に下げながら性能を伸ばしていくか?に絞られてきた。図7に示すように、2020年前半には100$/kWh、そして50$/kWhの世界に早く入らないとEV展開の地図はかけない。いよいよ、EVは正念場に来たと思う。@2021.2.8記
出典☛日経Automotive(2020年1月号)@日経BP社;p56 より加筆
《参考文献および専門用語の解説》
1)日産リーフのLiBはエンビジョンAESCグループ(中国企業80%、日産20%の出資会社)が製造供給。