2030年の基盤となるグリーン電力社会とグリーン水素社会
菅総理が表明したように、日本が脱炭素化のリーダーシップを取っていきたいというのであれば、国(政府)、クルマ会社、電力会社、燃料供給会社、そして一般国民が是非ともしなければならないことがあると思う。そして、これらが同時に進行・実施していかねば効果も薄く、永続的に住みやすいグリーン電力社会、グリーン水素社会は遠のいてしまう。日本人一人一人が日本をより住みやすい国にして国際目標であるSDGs¹⁾に到達し、世界のリーダーシップが取れるように後編の最後にお願いしたいことがある。これまでの検討結果から、主な施策は次に示すようだと考えている:
➊国(政府)へのお願い
今回サミット表明のために、従来脱炭素化のための予算を1兆円➡2兆円に積み上げるように菅総理が指示したと報道²⁾されているが、如何にして確保していくのか疑問である。もし、毎年2兆円規模の投資をしていくと仮定すると、2030年には20兆円規模となる。市場規模比=保有台数2.21億台@欧州/0.63億台@日本=3.5倍を考慮すると、欧州の50兆円を超える70兆円規模の投資に相当する。これは是非とも実現して頂きたい。具体的にはこの予算を次の開発・投資に充てて頂きたい:
1)再エネ発電設備投資・・・太陽光発電、風力発電設備の充実
2)水素生成の水電解装置およびグリーン水素装置とグリーン電力装置との接続
3)合成液体燃料の開発費援助
4)EV購入補助費(≒50万円)と各家庭のEV電源工事費(≒5-10万円)の国費負担
➋クルマ会社へのお願い
HV化、軽自動車化で進めてきた路線を一気にEV化路線に切り替えて頂きたい:
1)HV、軽自動車、GVの新規開発を2023年頃までに終了。ただし、現行のパワートレインはそのままの現状モデルで生産続行。
2)軽自動車、GVのEVモデルの開発にリソースを集中。各社共用することを考慮したモータ駆動部の開発を共同会社で開発。できるだけ早い時期に生産開始。そして2025年新車販売のEV化率25%、2030年50%を目指す。価格目標は国からの補助費を除いて、小型EVで150万円(軽自動車相当)、中型EVで200万円(中型GV相当)程度とする。この段階でドリームランド建設?に必要な2兆円利益は諦める。(➡そうでないと、クルマ会社は確実にApple社などに負ける。競合はクルマ会社ではない!)
➌電力会社へのお願い
国からの開発費補助を基に、2030年までに火力発電割合を43%に減らし、再エネ発電を35%まで増加させる設備充実を行って頂きたい。1)、2)は国との共同開発となる:
1)再エネ発電設備投資・・・太陽光発電、風力発電設備の充実
2)水素生成の水電解装置およびグリーン水素装置とグリーン電力装置の接続
3)電気代の段階的値下げ・・・24円/kWh☛12円/kWh³⁾⁴⁾@2030年。
(2020年米国、韓国料金レベルに追いつく)
➡電気料金値下げは国民にとって最大メリット!EV化もこれで動く!ただし、中国は習近平主席が2020年国連総会で原子力と再エネだけで2060年までにCO2排出量ゼロにすると表明。これにより、2030年代には3円/kWhになると予想されており、日本もまだまた下げられる要因は残されている。
➍燃料開発会社へのお願い
国からの開発費補助を基に、2030年でもHV・軽自動車・GV合わせて50%シェアを持つため、ガソリンエンジンは生き残る。したがって、カーボンニュートラルであるグリーン水素から生成される合成液体燃料の開発・供給を行って頂きたい。目標価格は現在のガソリン価格と同等の50円/L程度(現在の500円/Lは論外!)。税込みの一般価格は100円/L程度。これにより、生き残ったガソリンエンジンが救われる。日本が長年望んでいた中東原油依存から脱却できる瞬間である。
➎一般国民へのお願い
日本国民は新車検討時にはEVを優先して購入していく。これまでのEVの三悪の中で「価格」、「充電場所」については下記のごとく改善される。なお、「航続距離」、「充電時間」についは国民の方で十分妥協できるレベルと考える。以下はEVの具体的な特徴と利点である:
1)現行軽自動車価格150万円、中型GV250万円に対して、小型EV150万円(-補助費50万円)、中型EV200万円(-補助費50万円)とガソリン車に比べてより低価格なクルマを手に入れることが出来る。
2)EVの1㎞当たりの電気代は1例ではあるが、次のように計算される⁵⁾:
➡EV(日産リーフ@40kWh)料金=24円/kWh÷7㎞/kWh=3.4円/㎞@2020年
EV(日産リーフ@40kWh)料金=12円/kWh÷7㎞/kWh=1.7円/㎞@2030年
➡これに比較して従来のクルマでは1㎞当たりの燃料代は、
HV料金=150円/L÷22.5㎞/L=6.7円/㎞
軽自料金=150円/L÷19.4㎞/L=7.7円/㎞
GV料金=150円/L÷16.5㎞/L=9.1円/㎞
EVの電気代は、現在の電気料金24円/kWhでもガソリン車燃料代の1/2~1/3程度になる。
3)自宅の充電工事費が無料(国からの補助費)。
4)充電時間は2020年時点家庭200V電源で5~8Hr⁶⁾
(夜間に自宅時充電すれば問題なし)
5)ただし、EVユーザーは航続距離は現在の400㎞ではなく、遅々として進まないポストLiBの開発現状を考慮して、150㎞程度で受け入れる。その結果、メーカーとしてはLiB費用が半減以下抑えられ、EV価格をかなり下げることが出来る。片道10㎞、往復20㎞程度のスーパー、病院などは、150㎞の8割充電で週6回、120㎞の移動ができる。そもそも自宅で充電できれば、スマホ同じ感覚で毎日充電することに違和感はなくなっている。したがって、4)、5)をユーザーが受け入れれば、1)~3)のメリットを受けることが出来る。このことからEVはユーザーに、特に地方の高齢者に急速に受け入れられていくと考えらる。
以上のように、それぞれが一歩譲ってより良い社会を創ることに邁進していけば、2030年SDGsのいくつかの目標を達成することが可能となる。つまり、図4-26に示したグリーン電力社会とグリーン水素社会を我々日本人は2030年には迎えられることができると考えるのである。@2021.5.11記
《参考文献および専門用語の解説》
1)SDGs☛持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)とは,2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された,2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標。17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っている。SDGsは発展途上国のみならず,先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり,日本としても積極的に取り組んでいる。@「SDGsとは?」外務省ホームページ
2)「令和3年エネルギー対策特別会計の概要」@環境省ホームページ➡令和3年度予算は補正予算が組まれて、やっと2,100億円程度。
3)「電気代が高い国はどこ?」インズウェブ@2021.3.9
4)「電気料金の比較」@経産省資源エネルギー庁
5)「EVの電費」ev-efficiency@2020.5.3
6)「EVの気になる充電!時間や場所、料金は?」エネチェンジ@2021.2.10