第4章ではこれまでのクルマCO2低減状況、EV化推進のためのポストLiB開発状況について触れてきた。CO2大幅低減のためには、EV化が必須であることを理解して頂いたと思う。だが、ポストLiBの開発は中々進まず、EV三悪である価格、航続距離、充電方法・時間が大幅に改良されなければ、EV化は進まないだろうというのが大方の見方であったし、私自身もそう思っていた。事実、最近まで世界のEV化率は、2018年2.1%、2019年2.2%と低レベルを推移していた。
ところが2020年後半に入ると、欧州では2021年95g/㎞規制もあって、4-2節で述べたように大きく進み始めた。単月の欧州EV化率は一気に10%を超える!というのが欧州の今の姿になった。世界で2019年当時最もEV化が進んでいた中国(EV化率5%弱)では、NEV規制導入により2020年には7%程度までEV化率を伸ばして欧州を追従しようという動きになってきた。一方、テスラ社を擁する米国はEV化率1%前後であったが、バイデン政権に変わってゼロエミッション投資を大きく推進するようになった。これに便乗して心変わりしたGM社は、2025年まで30車種のEVを販売するとバーラCEOは2021年1月に発表した。
一方これに呼応するかのように見えた日本でも、菅首相は2021年4月に2030年温室ガス低減目標を26➡46%に上げた。この意味するところは4-10節で述べたように、現在日本のEV化率を直線的の増加させて2030年には50%にすることに相当する。ところが、クルマメーカーの反応が鈍いのである。HVと軽自動車に毒されたのか、EV三悪が改良されていないのにEV化推進は難しいという態度を取っていた。HVと軽自動車によるCO2削減の成功体験がクルマメーカーのみならず、消費者にも行き渡っていた。これではまずいと思ったのか、ホンダ社、日産社はEV車種を増やすと発表しているが、具体的な車種数については不明である。さらに、ホンダ社は2040年には「脱ガソリン車」に全面移行¹⁾を表明したが、その道のりは全く不明である。そして、肝心のトヨタ社が問題なのだ。未だHVに引きずられて、2025年までにEV車種を10%に増やすが、あくまでHVが中心。そうでなければ、雇用が維持できないとしている。そのため、4-8節で触れたe-Fuelに賭けるというのが豊田章男社長の2021年4月22日定例会見内容であった。
要するに、世界の急激なEV化の動きに対して、日本のメーカーは全く付いて行けないし、ましてやリーディングカンパニーになることなど夢のまた夢ということになる。あまりにもHV依存度、軽自動車依存度が高い。EV化率50%といっても残りの半分は未だガソリン車、HVなのである。半分は今のままの雇用体制でいいのである。そして残り半分はEV化による仕事量の変化だけを検討すればいいのである。最悪、日本のクルマメーカーは世界シェアが下がるのでは?という事態を何故考えないのか、不思議である。このままでは、日本のクルマメーカーは世界市場、中国、米国、そして欧州市場から見放されてしまうのである。大いに危惧している。
4つの章、全37節で言いたいことは、いま将に予期できなかった電動革命であるEV化が世界の主要国で始まっているということだ。そして、前節4-11で提言した内容を実行に移せば、日本の消費者にとっても意味あるEV化が実現でき、雇用も守れ、世界の冠たる自動車立国になり続けることが出来るのだ。是非とも5つのお願いである提言を取り入れて、EV化を大きく進めてもらいたいものである。
ところで、最後に今更ながらであるが、ブログ表題「おらが村にEVが走る!?」を説明させてもらいたい。高齢者の人口は、2020年65歳以上の割合は28.7%であり、2030年には31.2%と予想されている²⁾。つまり、私も含めて10人に3人が65歳以上になっているのである。今回のコロナ禍で思い知ったように、クルマという移動手段がなければ、地方で暮らす日本国民は生活が成り立っていかない。要するに、病院、スーパーなどに自由にいけなくなるのである。図4-27にガソリンの給油所数の推移³⁾をグラフで示している。また、図4-28には過疎市町村の給油所数推移⁴⁾を表で示した。これから分かることは、1998年➡2019年の間に給油所数は3万カ所を切って、半分に減少している。そして、その影響は過疎市町村で大きく、給油所3ヵ所以下の地域は300以上の市町村となっている。病院、食料品店に行こうとすれば、クルマが必須になってくるが、ガス欠したら生命線が断たれてしまうような状況にいつでも陥ってしまうのである。
したがって、自宅の200V電源で充電できるEVが低価格で手に入れば、高齢者にとって非常に安心なのだ。ガソリン代よりも低価格な電気代は年金暮らしの高齢者にとって、EVは優しい移動手段なのだ。自宅200V電源で充電できれば、充電頻度は多くなるが、航続距離が短くてもほとんど問題にならない。だから、4-12で述べた5つのお願いである提言内容は重要になって来る。実施に当たっては国、クルマメーカー、電力会社、そして消費者の4者の歩み寄りが必要となる。そんな中で築き上げるEV社会を日本が先駆けて是非とも実現して頂きたいと思っている。そして地方に行けば今の軽自動車に変わってEVが走っている状況を時折思い浮かべる次第である。将に「おらが村にEVが走る!」社会を築いて頂きたいと切に願うばかりである。了 @2021.5.30記
出典☛「ガソリンスタンド数や急速充電スタンド数の推移を探る(2020年公開版)」YAHOO!JAPANニュース@2020.8.30
出典☛「2020年1-10月ガソリンスタンドの倒産状況」東京商工リサーチ@2020.11.12
《参考文献および専門用語の解説》
1)朝日新聞朝刊@2021.4.26
2)「高齢者の人口」@総務省統計局ホームページ
3)「ガソリンスタンド数や急速充電スタンド数の推移を探る(2020年公開版)」YAHOO!JAPANニュース@2020.8.30
4)「2020年1-10月ガソリンスタンドの倒産状況」東京商工リサーチ@2020.11.12