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4-2 欧州電動革命によるCO2削減

2020年1月-10月販売車のEV化率は9.3%!

 さて、前節の電動化革命により肝心のクルマからのCO2はどの程度下がってきたのであろうか?図4-3に2020年1月から10月までに販売されたクルマの平均CO2量(g/㎞)がまとめてある¹⁾²⁾。ディーゼル車、ガソリン車は122g/㎞前後で差がない。これはディーゼル車が重量車に適用されているため、CO2排出量に有意差がなくなってしまったという結果である。HVはトヨタのようなフルHVとルノー、スズキ、現代にようなマイクロHVが含めれているため、104g/㎞前後で然程良くない。ヤリスHVであれば、64~71g/㎞程度であるのでトヨタHVだけであれば難なく95g/㎞規制はクリアしている。PHVは平均的に40g/㎞程度に収まっているようだ。2020年1月~10月の電動車シェアは19.3%。その内、EVが5%、PHVが4.3%になっており、いわゆるEV化率は何と9.3%にも上る。

図4-3 各種クルマの平均CO2@2020.1-10、EU-22

出典☛「2020年欧州二酸化炭素排出レポート」

   JATO JAPN Limited@2020.12.21 より加筆

2020年1月-10月販売車でPSAだけが100g/㎞を切った!

 次にこれらの組み合わせで、2020年1月~10月に販売したクルマの各社平均CO2はどの程度であったのか?調べてみた。図4-4にその結果例を示した¹⁾。最も低いPSAでも97.9g/㎞と未だに95g/㎞規制をクリアしていない(PSAの平均販売車重が不明であるので、95g/㎞で判断していいのか、何とも言えないところではあるが・・・)。第2位は元々第1位で95g/㎞規制を突破していると思われたトヨタ社。マツダ社を優遇措置であるオープンプール(後述)した為したため、グループ全体としてはCO2量が悪化している。後は、ルノー日産、現代起亜、スズキ、FCAと続く。VWはグループとして第8位の114.5g/㎞と20g/㎞程度オーバーしている。この状況が11-12月のEV駆け込み販売でどの程度良化の方向に向かっているのか、興味深い。

図4-4 各社の平均CO2順位@2020.1-10、EU-22

出典☛「2020年欧州二酸化炭素排出レポート」

   JATO JAPN Limited@2020.12.21 より加筆

スーパークレジット、フェーズインは救済措置?

 2021年規制を迎えるの当たって、EV化を積極的に進めるためとフェーズイン時期の救済措置が設定してある。これを簡単に説明¹⁾しておこう:

➊スーパークレジット☛

排出量が50 g/km以下の車両は、2020年から2022年の間に限り、以下の重み係数が適用され、全体の平均値を小さくすることができる。2020年は1台が2.00台、2021年は1台が1.67台、2022年は1台が1.33台。2020年から2022年までの3年間を合算した排出量の平均値の内、スーパークレジットを利用した場合と、利用しない場合の差が、1ブランドあたり最大で7.5g/kmとなる範囲で適用される・・・>ZEV規制、NEV規制のクレジット計算に似た救済措置?

➋フェーズイン☛

2020年は猶予期間とされ、自動車会社が販売した車両の内、排出量が多い上位5%の台数は計算対象から除外される。2021年からは、販売されたすべての車両が計算の対象となる・・・>これも明らかに救済措置?

➌オープンプール☛

排出量の平均値を算出するにあたり、自動車会社は連合を組んで目標値を達成することができる。この連合をオープンプールと呼ぶ。例えば、PSA:シトロエン、DS、オペル、プジョー等、トヨタ:レクサス、トヨタブランド、マツダ。・・・>達成可能な会社が達成できない会社にポイントを分け与えて、罰金額を減らしてやろうとする措置と推定。

以上の3つの救済措置をして、2021年95g/㎞規制を迎えることになる。

 図4-5には2020年1月~10月の各社平均CO2排出量に対して、救済措置有り無しのデータを示した。95g/㎞規制は販売した車両重量の平均値が重ければ甘くなり、軽ければ厳しくなるので、あくまで95g/㎞規制値は参考として頂きたい。そのため、100g/㎞で線も参考として示しておいた。PSAは余裕でクリア、トヨタはマツダ超過分の影響でギリギリクリアか、ルノー・日産はクリア、巨大なVW Grは100g/㎞に到達せず、EVの追い込みでどうなるのかといった状況である。

欧州販売台数の半分は、カンパニーカー!

 ただ、ここで不思議?と思われる読者も多いと思う。いくらエンジンメーカーが電動車の拡販に力を入れても購入するのは消費者の方である。400㎞、400万円のクルマを欧州の消費者は、何故好んで購入する気になるのか?特に日本人には不思議でならない。

 日本と欧米の消費者の大きな違いに、欧米で導入されている「カンパニーカー」の存在がある。日本では経営陣、役員にしか使われていない社有車が、欧州では販売台数の半分がカンパニーカーなのである。通勤定期や社宅のような感じでクルマを社員に貸与する。車種の選択は職能等級によるが、肩書無しだとBセグメント車、係長クラスならばCセグメント車、課長クラスならばDセグメント車といった具合である³⁾。貸与する側の会社としては企業イメージアップのため、EV・PHVを使わせようとしているのが実態。自動車メーカーの思惑とカンパニーカーを貸与する企業側のニーズがガッチリ合ったというわけだ。

 3つの救済措置とカンパニーカーへのEV導入もあって、欧州の電動化革命はかなり勢いよくスタートした。そして、明らかにクルマから排出される平均CO2量も下がってきた。恐らく政府が援助している中国のEV化としばらくは良い勝負をするのではないかと思われる。そして、世界のEV市場は欧州と中国が中心となって確実に広がっていく。@2021.3.17記

図4-5 「Supercredits &Phase in」有無の平均CO2@2020.1-10

出典☛「2020年欧州二酸化炭素排出レポート」

   JATO JAPN Limited@2020.12.21 より加筆

《参考文献および専門用語の解説》

1)「2020年欧州二酸化炭素排出レポート」JATO JAPN Limited@2020.12.21

2)EU-22☛対象国は以下の22カ国:オーストリア、ベルギー、クロアチア、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、イギリス、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、オランダ。

3)「欧州の場合、販売台数の半分はカンパニーカー。そこに電気自動車が入ってきており販売台数急増」国沢光弘@2021.1.29

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    • 第1章 クルマ談義の始まり!
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