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4-3 EV革命の中で中国は?

2020年欧州はEV・PHV132万台、中国は136万台!

 欧州市場から世界市場へEV化はどうなっているのか、少し拡げてみよう。欧州における2020年の電動革命は、国別メーカのEV・PHV世界販売台数でもはっきりと表れている。図4.6に2019年と2020年での販売台数順位20位までの合計販売台数を国別にまとめたものを示した¹⁾。2019年の販売台数が221万台に対して2020年では312万台と1.4倍に増加したと言える。特に欧州のEV販売台数シェアは、第3位14%から一気に第1位32%と上昇している。これは当然欧州市場の数字が大きく反映されていると思われるが、世界市場への拡販、特に中国市場の販売台数割合も影響していると思われる。

 ただし、図4-6は販売台数順位20位までの合計であるため、実際には2020年に欧州は132万台、中国は136万台²⁾ということで、最終的には中国が何とか首位を維持したようだ³⁾。EV化率は、中国が6.7%に対して欧州は11.1%となっている⁴⁾。如何に欧州が急激に伸びてきたのか、この数字からもよく理解できる。これからも中国市場、欧州市場での中国メーカと欧州メーカの熾烈な戦いが続きそうだ。その中にたった1社でこの争いに加わろうとしているのが、米国のテスラ社という構図になっている。韓国メーカも頑張ってはいるが、あくまでわき役に控えている。

 日本の自動車メーカは非常に心配である。脇役どころか、21位以下のOthersに組み込まれてしまいそうな流れである。電動車としてHVを世界拡販しながら、EV・PHVも徐々にと考えているようだが、世界のEV化の流れは思いのほか強く、結果的には日本は9%から4%に大きく後退している。このままOthersに吸い込まれていくのであろうか?

図4-6 国別メーカのEV・PHV世界販売台数

出典☛「2019年vs.2020年のEV・PHV販売台数HV」兵庫三菱/姫路三菱ウェブ編集局@2021.2.26 からのデータを基にグラフ化

EV販売で欧州勢が大躍進、Best10に6社!

 メーカ別世界販売台数では、テスラ社が37万台から50万台に大きく伸ばし、第2位のVW社を2倍以上引き離してダントツの1位を確保している。モデル3だけで世界で37万台も販売された。この傾向はしばらく続きそうな勢いである。

 第2位のVW社は、ID.3、e-Golf、パサートPHVなどでEV・PHVを拡販した成果が表れ、2019年の第6位からの躍進となった。この傾向も今後続きそうだ。やはり中国勢は全体として量的にも勢いがあるが、2020年10万台以上の第10位までの中に欧州勢は6社も登場して来た。欧州電動化革命の勢いがそのまま表れた形となっている。

 それに対して、上位にいた日産が7位から14位に、トヨタは10位から17位に順位を下げ、三菱は20位までのランキングから姿を消した。日本勢は余程の覚悟をしないと、EV・PHVの世界には入り込めない状況になってきている。米国Big3がシェール革命の恩恵でCO2削減のクルマ社会から忘れ去られたように、日本Big3がHVの成功に酔いしれて、EV化の世界からは忘れ去られてしまいかねない状況にあると考えた方がいい。

図4-7 メーカ別のEV・PHV世界販売台数

出典☛「2019年vs.2020年のEV・PHV販売台数HV」兵庫三菱/姫路三菱ウェブ編集局@2021.2.26 からのデータを基にグラフ化

中国NEVは政府・自治体の補助金で着実に市場に拡大!

 中国政府は2035年までにNEVシェアを50%以上に高めるという方針⁵⁾を出した。そして残りは全てHVにして100%環境車にするようだ。これに伴い、中国政府・大都市政府は補助金支給やナンバープレート発給優遇などで後押しする形をとっている。たとえば、上海市政府は2035年ではなく2025年までに個人が購入する新車に占めるEVの比率を50%以上、政府公用車などをNEVに80%以上に切り替えるという目標を発表している⁶⁾。また、東京と同じ人口の深セン市では既にタクシー(2.2万台)もバス(1.6万台)も100%EV(全てBYD製)になっている⁷⁾。2015年にはEVタクシーの購入に220万円、2017年には270万円の補助金を支給しているとのことだ。正に国・地方自治体が一体となって国民を援助し、EV化を前へ前へと進めようとしている。これが中国大都市部のEV化実態だ。

 話は変わるが、深セン市では一部の区間で自動運転の実証実験を行うEVバス(パンダバスと呼ばれている)の運行が始まった⁷⁾。このバスにはAIが搭載されており、レベル4の自動運転を行っている。周辺の車両、歩行者などを識別して、12㎞の区間を45分で走行している。アジアのシリコンバレーと言われる、人口1300万人の深セン市は、EV化はもちろんのこと、スマートシティーとして発展を続けているのだ。

 一方、日本では2021年2月トヨタ社が富士の裾野で2000人程が住めるIT実験都市Woven Cityの着工に取り掛かったと公表された。いつ完成するのか公表されていないが、いずれにしてもこのスマートシティーへの取り組み方で、中国1300万人と日本2000人のレベル格差は、あまりにも大きい。HV化の成功に浮かれてしまった日本と必死にEV化に賭けた中国とでは、いつも間にか随分差がついてしまったと感じるのは私だけであろうか?この中国の主要都市部におけるEV化、そしてスマートシティ化は、これから中国国内の地方都市部へと広がっていくことであろう。その速度は日本人が考えているよりもかなり速い。

 消費者の高まるクルマへの要求を追いかけるようにEV開発をしていたら、EV化というものは世の中に浸透していかないような気がしてきた。今まさに欧州はCO2規制とカンパニーカー、中国はNEV規制と国・自治体の補助金という相乗効果でEV化の大きな波を作ろうとしている。結果的にEV化路線に乗り遅れてしまった米国と日本はこれからどう挽回していくのであろうか?挽回する気があるのであろうか?@2021.3.19記

《参考文献および専門用語の解説》

1)「2019年vs.2020年のEV・PHV販売台数HV」兵庫三菱/姫路三菱ウェブ編集局@2021.2.26

2)「欧州のEV・PHV販売、中国に並ぶ 20年は前年の2.4倍」日本経済新聞電子版@2021.2.5

3)図4-6は上記文献の数字から、上位20位までの国別で分類した結果。したがって、Othersの中に各国の数字が隠れている。文献1)➡2)では、欧州99➡132万台、中国66➡136万台となっている。中国では約2倍になっていることから、21位以下に非常に多くのEVメーカーを抱えていることがこの数字でもお分かりになると思う。ただし、文献2)の数字に米国50万台、韓国18万台、日本11万台を加えると347万台となり、文献1)の312万台と異なってしまうが・・・。あくまで参考数字ということでお許し願いたい。

4)2020年欧州の乗用車販売台数は1,196万台(欧州新車販売は2121年後半から回復@Response2021.2.5)、中国は2,017万台(新華社2021.1.19)であったので、それぞれのEV化率は、中国:136/2,017=6.7%、欧州:133/1,196=11.1%。

5)「中国、35年に全て環境対応車 ガソリン車排除」JiJi.COM@2020.10.28

6)「中国・上海市、個人向け新車のEV比率を5割超に」財新Biz&Tech@2021.3.10

7)「中国の1000万都市はタクシーもバスも100%電動化を達成」中国EV旋風@2021.3.3

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  • ❾おらが村にEVが走る⁉(GV、HV編)
    • まえがき
    • 第1章 クルマ談義の始まり!
      • 第1話 はじめに
      • 第2話 10の疑問点
      • 第3話 EV化は進むのか
      • 第4話 燃焼サイクル
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      • 第22話 Tank-to-Wheel効率
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      • 第27話 なぜ日本だけ?
    • あとがき(GV、HV編)
  • ➓おらが村にEVが走る⁉(EV編)
    • 第1章 パリ協定は燃費規制❔
    • 第2章 クルマのCO2は下った❔
    • 第3章 EVに賭けるしかない❔
    • 第4章 世界が動き出した❕
  • ⓫雑学談話「電気・モーターのはなし」
    • はじめに
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