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4-4 バイデン大統領のEV化計画?

テスラ社があっても2019年EV化率は2%❔

 さて、テスラ社を有する米国の国内EV化はどうなっているのであろうか?シェール革命の恩恵を受けて、ガソリン価格が世界価格の1/3~1/4で米国国民に供給されたため、クルマの燃費というものにほとんど無関心な状態が続いた。唯一加州のZEV規制に参加した11州だけは、EV化を進めることによりクルマからのCO2を削減していく意識を持っていたように思える。それに反して、トランプ政権は米国第1主義を掲げて、国民が望んでいるガソリンSUVを供給し、SUVでしか利益を上げられなくなった米国Big3を後押しすることが優先施策となった。2017年6月にはパリ協定脱退を表明し、2018年8月にはオバマ政権時代に制定した燃費規制MY2025を先送りにして現行のMY2018レベルを続行するとした。これまで進めてきたクルマの燃費規制、ZEV規制に大きくブレーキをかけた。2020年までの4年間は、当時の欧州市場、そして中国市場の動きとは全く異なるものとなった。ここまで緩んでしまった米国自動車業界は、たった1社だけで頑張っているテスラ社を除けば、米国の、米国による、米国のための自動車産業界となり果ててしまったのだ。

 図4-8に米国市場における2011年から2019年までのEV・PHVの販売台数推移¹⁾を示した。テスラ社は国内で中々売れないこともあって、市場を欧州、中国に求めた。その結果、2019年の乗用車・SUVの米国販売台数は1705万台であったので、PHVを含めたEV化率は1.9%となる。テスラ社1社が頑張っているので、この1.9%という数値が確保できたのだと思われる。未だ2020年のクルマの総販売台数、EV・PHV販売台数が公表されていないので、EV化率は分からないが、同程度の2%前後と考えている。欧州11.7%、中国6.7%からEV化がさらに大きく進んでいくであろうと推定されるので、現時点2%程度の米国EV化では、欧州、中国から大きく引き離されたと考えるべきであろう。

図4-8 米国市場のEV・PHV販売台数推移@2011-2019年

出典☛「米国もついに電気自動車の時代へ?バイデン政権が改革」NATIONAL GEOGRAPHIC@2021.1.27

これから進める「バイデン大統領EV化計画」❔

 そして、2021年1月トランプ政権からバイデン新政権に変わった。トランプ政権時代の悪行を取り戻すため、先ずはパリ協定に復帰することを表明した。また、燃費規制の強化策として規制MY2025を規制MY2026として施行する検討に入った。そして、バイデン新大統領は公約通り、2050年までにクルマからのCO2をゼロにする!検討に入った。クルマの寿命を考えると遅くとも2035年までに米国全体で販売される乗用車・SUVをゼロエミッションにしなければならない。これは欧州各国が既に表明している目標に近い。具体的な計画として初めに65万台の公用車の内、乗用車22.4万台、トラック41.2万台をEV化すると表明²⁾。この調達に関しては従来の連邦政府のBuy Americanルールがかなり厳しく適用されると述べられている。トランプ政権時代にはEV化に否定的だったGM社は、豹変して2021年1月にEVトップメーカを目指すため、新しい事業部門BrightDropを立ち上げると発表。

 2021年1月22日CESの基調講演で、GM社のCEOメアリー・バーラ氏がその概要を語った³⁾。主要製品は、一つは航続距離250マイル(402㎞)のEV600と呼ばれる電動バン、そしてもう一つはEP1と命名された電動パレットだ。これにテレマティクス、車両管理などの知見を含めて、Eコマース需要の急速な増加に対応していくとしている。2021年初頭にEP1、2021年末までにEV600を投入していく。その際、車両情報などをひも付けた形でソフトウェアサービスも提供予定だという。

 さらに、一般乗用車から高性能車までのEV化も手掛ける。そして2025年までに何と30車種のEV化を進める方針を示している。その発売車両の2/3は北米で販売させる計画だ。図4-9にEV開発に関するGM社の各数値目標を示した⁴⁾。GM社は社運を賭ける勢いで取り組もうとしているのがよく分かる。またRivian社、Lordstown Motors社などの新規EVメーカーの参入も相次いでいる。バイデン大統領の車両置き換え指定は、今着々と進み始めた⁵⁾という感じである。

 国産EVへのこだわりを見せ、米国を世界のEV産業の中心にしたいというバイデン政権の目標ではあるが、一度緩んだ手綱を締めるには相当な時間とお金、国民の理解、そして継続する連邦政府の力が必要とされる。これからに期待したい。@2021.3.20記

図4-9 GM社の数値目標「EV化、自動運転化」

出典☛日経Automotive2021年2月号;P28 より加筆

《参考文献および専門用語の解説》

1)「米国もついに電気自動車の時代へ?バイデン政権が改革」NATIONAL GEOGRAPHIC@2021.1.27

2)「バイデン大統領が連邦政府機関の全車両のEV化を発表」TechCrunch Japan@2021.1.27

3)「電動化に全振りのGM、全車種の電動化とともに物流向けEVサービスへ参入」Monoist@2021.1.14

4)日経Automotive2021年2月号;P28

5)「バイデン氏のEV計画は実現するか」Wedge Infinity@2021.1.28

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