日本は2030年度低減目標を変更:26%➡46%?
米国主催の気候変動問題に関する首脳会議(サミット)が2021年4月22日、オンライン形式で開幕した。図4-22に示すように、各国首脳らが演説する中で、日本の菅首相は2030年度までに温室効果ガスを2013年度比で46%削減するとの新たな目標を表明した。これまでの目標である2013年度比26%削減から大幅引き上げになることから、首相は「決して容易なものではない。トップレベルの野心的な目標を掲げることで、我が国が世界の脱炭素化のリーダーシップをとっていきたい」と意欲を示している¹⁾。
確かに米国バイデン大統領も2005年比で50-52%削減、欧州は1990年比で55%以上、中国は2005年比で65%以上削減するとの表明をしている。2020年後半から一気に電動化革命の時代に入った欧州ですら、1990年比で55%なのである。日本の2013年比46%削減が如何に厳しい目標か、お分かりいただけると思う。ただし、日本政府は各部門での目標と具体的な削減策については未だ表明していない。地球温暖化にブレーキを掛けるには、2020-2030年の活動結果が重要で、2050年の温度上昇を2℃以下に抑える目標に大きく近づくこととなる。日本人として誇らしいが、何をどう政府が支えながら、国民に協力を求めていくのか、今から注目・期待している。コロナ対策のように、一方的に国民、企業に押し付けることはあってはならない。
では2030年度46%削減が26%に対してどの程度大変なことなのか、クルマの電動化で具体的に説明してみよう。
出典☛朝日新聞朝刊@2021年4月23日 より加筆
2030年46%削減に対して、EV化率は50%必要⁉
まず、2030年度26%削減時の目標2030年平均CO2を算出してみよう。節2-8では削減率30%で目標値を算出したが、今回は26%で算出し直そう:
❏目標平均CO2@2030年=(1-0.26)✖180✖6000/6300=126.86≒127g/㎞
では、新目標46%では;
❏新目標平均CO2@2030年=(1-0.46)✖180✖6000/6300=92.57≒93g/㎞
では、EV化率を2030年に何%まで引き上げなければならないか、計算してみよう。節2-8ではクルマの寿命を15年として2030年に保有するクルマは2016年~2030年に販売されたクルマの総台数とした。また、2016年~2020年の実平均燃費から平均CO2を算出すると、
❏HV=103g/㎞、軽自=119g/㎞、GV=140g/㎞
であった。一方、EVはTank-to-Wheelでは、EV=0g/㎞とした。
また、HV、軽自、GVの台数比率は、ここでも節2-8に倣って、
❏HV=33%、軽自=37%、GV=30%
とした。したがって、このままの状態で2030年を迎えた場合、平均CO2は節2-9で示したように次のように計算される:
❏平均CO2@2016-2030年
={103✖0.33+119✖0.37+140✖0.30}✖6300/6000=126g/㎞<127g/㎞
したがって、削減率が26%であればEV化は必要なかったのだ。
ところが、新目標値46%に対しては目標平均CO2の値は93g/㎞という厳しい値となる。
POINTはどうやってEV化率を上げていくか?である。ここではHVシェア33%はそのままにして、ガソリン車である軽自動車、GVの割合をそれぞれ5%ずつ、全体では10%ずつEV化率を上げていった場合の平均CO2を算出していった。例えば、2030年EV化率10%とは
❏HV=33%、軽自=37➡32%、GV=30➡25%、EV=10%
のことを言う。図4-23に2030年のEV化率を上げた時、平均CO2がどの程度下がっていくのか計算した結果をグラフ化した。これから分かるように、実に2030年にはEV化を50%、2016-2030年の平均EV化率を25%にしなければ、削減率46%を達成することが出来ないという結果になった:
❏平均CO2@2016-2030年
={103✖0.33+119✖0.12+140✖0.05}✖6300/6000=92g/㎞<93g/㎞
2030年EV化率50%とはHV、軽自、GV、EVの各シェアが、
❏HV=33%、軽自=37➡12%、GV=30➡5%、EV=50%@2030年
というクルマ社会を10年後の2030年には実現しなければならないということだ。新車販売のガソリン車が67%➡17%と1/4、EVが何と50%になってしまうクルマ社会を10年後の2030年に向かえなければならないのだ。温室ガス46%削減という目標は、軽自動車とHV中心の日本社会に神風が吹かなければ、到達できないレベルなのである。したがって、国(政府)、クルマ会社、電気会社、燃料供給会社、そしてユーザーである国民がどこかで折り合っていくことが重要となる。@2021.5.7記
《参考文献および専門用語の解説》
1)読売新聞オンライン@2021.4.13