くわな科学技研
  • ➊くわな科学技研って?
  • ❷代表者はどんな人?
  • ❸グリーン社会をめざして!
  • ❹何をやっているのかな?
  • ❺講演会のテーマは?
  • ❻どんなセミナー教育?
  • ❼セミナー教育の具体的概要とは?
  • ❽お手続きの流れ
  • ❾おらが村にEVが走る⁉(GV、HV編)
  • ➓おらが村にEVが走る⁉(EV編)
  • ⓫雑学談話「電気・モーターのはなし」

第48話 米国にもEV必要

 「さて、午後からはもう一つのケース、米国ZEV規制を守ったら2030年平均CO2目標は達成できるのか?という検討に入る。ZEV規制は既に第4章第5話で話したよね。簡単に復習しようか?」

「そうしてもらえると助かるな。」

「ZEV規制はクレジット(cr)という値が全体に対して規制値割合以上になるように販売することが条件だったね。例えば、2018年は2%以上のZEV(cr)、2.5%以下のTZEV(cr)、トータル4.5%以上のクレジットが必要になる。具体的に言えば、10万台米国でクルマを販売している会社を例にとると、

➊EV販売台数☛100,000×0.02/2.5cr=800台以上

➋PHV販売台数☛100,000×0.025/0.6cr=4167台以下

ということで結果的には等号だけで計算すると、ZEV、TZEVでもない普通車の台数は

❏100,000-(800+4,167)=95,033台>普通車販売可能台数

となり、この台数以上は販売することができないということだったね。」

「そうでした。思い出したよ。」

「次に、ここでも同じような仮定をおくことにした:

1) ZEVはEVであり、CD距離は200マイル(320㎞相当)☛EV=2.5cr

2) TZEVはPHVであり、CD距離は30マイル(48㎞相当)☛PHV=0.6cr

3) ZEV規制は、カリフォルニア州を初めとする計11州で施行されており、これらの新車登録台数は全米の25%に達する。計算では25%シェアともう少し増加した場合の40%シェアで計算してみた。

4)2016年の平均燃費である24.7MPGを計算のベースとする。

5)ZEV規制は、あくまでZEV(cr)の下限とTZEV(cr)の上限を示しているが、計算ではZEV(cr)=規制値(%)、TZEV(cr)=規制値(%)として計算を進める。

6)ZEV規制は2025年まで公表されているが、2026年以降は未発表。そこで、2025年までのcr割合の増加割合で2030年まで実施したとする。」

「2030年となると、これくらいの仮定を置かないと確かに計算は難しいね。」

「実はどう仮定を置くかで苦労したよ。各年度のZEV規制値に対する必要な最小販売台数をEV**(万台)、PHV**(万台)、さらにこの台数による各年度の平均燃費(MPG)、平均実CO2(gr/km)を求めてみた。計算には下記の諸式を適用する:

1)各年のGV、EV、PHV台数(11州25%シェアで係数0.25、40%シェアで係数0.40):

❏EV**(万台)=1,700×規制値(%)/100×1/2.5cr×0.25(もしくは0.40)

❏PHV**(万台)=1,700×規制値(%)/100×1/0.6cr×0.25(もしくは0.40)

❏GV**(万台)=1,700-(EV**+PHV**)

2)GV燃費@2016年とその実CO2(gr/km):

❏GV燃費=24.7(MPG)

❏GV実CO2=2320/(24.7×0.425×0.70)=315.7(gr/km)

3)EV燃費とその実CO2(gr/km):

❏EV燃費=0(MPG)

❏EV実CO2=0(gr/km)

4)PHV燃費(MPG)とその実CO2(gr/km):

❏PHV燃費=38.5@図5-1×1.3(モード比率CAFE/JC08)/{0.425×0.70(モード変換⁾}=168.2(MPG)

❏PHV実CO2=60.2(gr/km)@図5-1

5)2020-2030年における各年の平均燃費(MPG)と平均実CO2(gr/km):

❏平均燃費=24.7×GV**/1,700+0×EV**/1,700+168.2×PHV**/1,700(MPG)

❏平均実CO2=315.7×GV**/1,700+0×EV**/1,700+60.2×PHV**/1,700(gr/km)

以上の諸式から計算された各年の燃費(MPG)、実CO2(gr/km)の計算結果を図5-18の表、図5-19の棒グラフに示した。結果的に、ZEV規制が11州シェア25%で施行された場合では燃費低減が不足であるため、シェア70%で施行された場合も示した。」

「ZEN規制が11州で2030年まで有効であったとしても、燃費低減速度は緩やかなんだね。」

「その通りだね。結果的には当初の予定通り11州で施行された場合では、クルマの販売シェア25%程度であるため、

CO2(2020-30年;25%)=304.3(gr/km)>285(gr/km)

と低減割合は約21%。低減目標26%である285gr/kmには全く到達できていない。2030年では1,700万台中、EV44万台、PHV60万台、合わせて104万台で、6.4%のEV化率ということになる。欧州の予想19%、IEA予想20.6%には遠く及ばない。但し、GVの低燃費化を2016年24.7MPGで止めているため、EV、PHV化の効果しか現れていない。実際にはGVの燃費改善はさらに進み、285gr/kmにもう少し近づくと思われるけれど低減不足だね。

そこで、仮にZEV調印の州が全米の70%シェアに及ぶとすると、

CO2(2020-30年;40%)=283.7(gr/km)<285(gr/km)

となって、低減割合26.5%でパリ協定は何とか守られると言える。この時2030年におけるEV化率は、17.2%になる。やはりIEA予想が示すように20%近いEV化率が必要となってくるね。これには米国が如何にZEV規制を全州に広められるかにかかっている。中国に続いてCO2排出量世界第2位の先進国なのだから、その責任は果たすべきだよね。結果的には欧州も米国もIEA予想のEV化率20.6%に近い数字を残さないと、2030年には達成できないし、2013年度比CO2を26%も下げることも難しくなるね。そういう意味では、HV、軽自動車が主体の日本は特殊な例かもしれない。これまで地道に燃費低減の努力をしてきた結果なのだろうね。」

「米国は分かって来たけれど、一方の中国はどうなの?」

「中国についてはデータが全く公表されていないため、残念ながら話をすることができないけれど、米国と同じくSUV化が進んでいるのは事実だ。2016年にはSUV=37.1%、MPV(ミニバン、バン)=8.6%、そしてトータル=45.7%となっている。2017年ではトータル53.5%と増加傾向にあり、米国と同じような状況を示している²⁰⁾。おそらく、これからの燃費改善もそう簡単に進むとは思えない。2015年末で2億7,900万台という保有台数の国は、やはり米国と同じようなEV化、PHV化により、SUV化と燃費バランスを取っていかなければならないと思っている。」

「パリ協定のCO2低減率26%だけを考えた時、日本はHV、軽自動車の恩恵でEV化は必要ないということだね。一方、欧州、米国、そしておそらく中国はEV化率が20%ほど必要ということだ。2018年のEV販売台数128万台、PHV販売台数57万台²¹⁾、総販売台数が9,800万台と言われているから言われている、2018年のEV化率は約2%。これを10倍にするということだ。」

「ところで、簡単にEV化といっても、これまで出来ていなかったということは大きな課題が山程あるから、そうは簡単に広まらないはず。」

「その通りだ。特に重要なのは次の2点だ:

1) EVの展開に当たって、現在一体何が課題として残っているのか、その見通しはどうなのかが、全く談義の中で確認されていないこと

2) 談義が“Tank-to-Wheel”燃費から“Well-to-Wheel”燃費に、そろそろ移行しないと、EV化のCO2に対する利点が不明であること

そこで、1週間ほど時間をもらって上の二つを含めたWell-to-Wheel燃費により、EVの持っているポテンシャルがどう変わっていくのか、EV化課題と共に評価したいと思っている。いよいよ核心に近づいていきたという感じだね。」

「いやあ、これは面白くなってきた。ここ数日の事を整理しておくよ。」

博士も何か充実した時間を過ごせた気がした。でも頭の中ではこれからの広がっていく談義の範囲をどうまとめていくのか、少々頭を悩まし始めた。@2019.8.13

 

《参考文献》

20)「上海自動車ショー2017の概要」松本邦裕@SMBC日興証券(2017.6.2)

21)「2018年電動車(エコカー)販売台数ランキング」EV業界がわかるノート@2019.5.2

 

図5-18 米国ZEV規制による各年の実CO2推定➀

図5-19 米国ZEV規制による各年の実CO2推定➁

くわな科学技研

❏E-mail☛

kwn-kagakugiken2012

@wa2.so-net.ne.jp
kwn.kagakugiken130722

@gmail.com

お問合せはこちらから

概要 | プライバシーポリシー | サイトマップ
Copyright (c) kuwanagiken. All Rights Reserved.
ログイン ログアウト | 編集
  • ➊くわな科学技研って?
  • ❷代表者はどんな人?
  • ❸グリーン社会をめざして!
  • ❹何をやっているのかな?
  • ❺講演会のテーマは?
  • ❻どんなセミナー教育?
  • ❼セミナー教育の具体的概要とは?
  • ❽お手続きの流れ
  • ❾おらが村にEVが走る⁉(GV、HV編)
    • まえがき
    • 第1章 クルマ談義の始まり!
      • 第1話 はじめに
      • 第2話 10の疑問点
      • 第3話 EV化は進むのか
      • 第4話 燃焼サイクル
      • 第5話 燃焼室の圧力
      • 第6話 理論熱効率
      • 第7話 正味熱効率
      • 第8話 ディーゼル熱効率
      • 第9話 平均有効圧力
      • 第10話 燃料消費率等高線
    • 第2章 GV、DVは消えるの?
      • 第11話 化学反応式
      • 第12話 三元触媒のしくみ
      • 第13話 理論空燃比制御
      • 第14話 Downsizing-Turbo
      • 第15話 超希薄燃焼技術➀
      • 第16話 超希薄燃焼技術➁
      • 第17話 クリーンディーゼル
      • 第18話 VW社不正問題➀
      • 第19話 VW社不正問題➁
    • 第3章 日本で花開いたHV!
      • 第20話 歴史を紐解く
      • 第21話 3つのHV
      • 第22話 Tank-to-Wheel効率
      • 第23話 HVの走行パターン
      • 第24話 HVの燃費モデル
      • 第25話 各Tank-to-Wheel効率
      • 第26話 シリーズHV
      • 第27話 なぜ日本だけ?
    • あとがき(GV、HV編)
  • ➓おらが村にEVが走る⁉(EV編)
    • 第1章 パリ協定は燃費規制❔
    • 第2章 クルマのCO2は下った❔
    • 第3章 EVに賭けるしかない❔
    • 第4章 世界が動き出した❕
  • ⓫雑学談話「電気・モーターのはなし」
    • はじめに
    • 第1章 電池のはなし
      • 1-1 電流とは?
      • 1-2 水流と電流
      • 1-3 オームの法則
      • 1-4 電力と電力量
      • 1-5 電流と電圧
      • 1-6 電解液
      • 1-7 化学電池とは?
      • 1-8 電池の種類と構成
      • 1-9 アルカリ乾電池
      • 1-10 2次電池
      • 1-11 エネルギー密度
      • 1-12 鉛蓄電池
      • 1-13 ニッケル-水素電池
      • 1-14 リチウムイオン電池
      • 1-15 ポストLiBを求めて
閉じる